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マフィアスフィル幹部・蔵喰 長門

常に薄く笑みを浮かべた、物静かで掴みどころのない人物。感情そのものが欠落しているわけではないが、その振れ幅は極端に小さく、危機的な状況に陥っても焦燥や怒りを露わにすることはほとんどない。他者を無意識のうちに自分より下位の存在として捉えている節があり、敵意を向けられても態度を崩さない。

スフィル幹部・最高研究官に就任し、コードネームは蔵喰(くらく)。博士とも呼ばれる。他者への関心は基本的に希薄だが、一度興味を抱いた対象には異様なほど執着し、観察や実験を繰り返す。倫理観や他者との正常な距離感が著しく欠けており、欲したものを手に入れるだけでなく、自らの側へ取り込み、繋ぎ留めようとする傾向が強い。但し飽きてしまうと一気に興味を失い、どんなものでもあっさりと手放してしまう。

実験では成功そのものよりも『未知の結果を得ること』に僅かな喜びを感じており、予測から外れた現象を目の当たりにすると、機嫌を良くしたように静かに目を細める。しかし、どれほど成果を重ねても長門の心が満たされることはない。その喜びはごく一時的なものであり、満足を得られないまま次の興味や実験へと手を伸ばし続けるマッドサイエンティストである。

スフィルに対する忠誠心や帰属意識は薄く、他の幹部を仲間だとも思っていない。必要であれば共に行動するものの、相手の指示に従うとは限らず、自身の目的や興味を優先する。

山城についても目的達成のための手駒という認識に変わりはないが、その能力と利用価値を高く評価しているため、他者と比べれば明確に優遇している。盲目である山城の目となって周囲の状況を伝えることも多い。一方で”重要度の高い駒”であることと労わることは別であり、必要と判断すれば容赦なく酷使する。

配下には長門の持つ神性と異常性に魅入られ、信仰にも似た盲目的な忠誠を寄せる者が多い。長門自身は彼らから向けられる崇拝にさほど関心がなく、利用価値がある限り傍に置いている。

普段は極めて感情の起伏に乏しい一方、創造神に対してだけは強い怒りを秘めている。また、彼の種族固有能力『幻影の力』を著しく減退させた過去のある出来事が深いトラウマとして深く刻まれており、普段は何事にも動じない長門が、ある人物に対してだけは現在も拭いきれない恐怖を抱いている。

〔暴食〕の権能

〔暴食〕、スフィルより蔵喰の名と共に与えられた権能。長門が元来持つ『癒着』とは異なる別種の能力であり、その本質は文字通り対象を”喰らうこと”にある。ただし、ここでいう〔暴食〕は物理的な食欲や捕食を意味するものではない。魂や神性を他のものへ繋ぎ留める『癒着』に対し、〔暴食〕は対象そのものを取り込み、貪ることに特化している。通常時はある程度対象を選別し制御することが可能だが、術者である長門が著しく衰弱するなどして制御を失った場合、その性質は際限なく周囲を喰らい続けるものへと変貌する。

また、長門の内には自身のものではない強い神性が残存している。それは長門を覆う一種の”膜”となっており、〔暴食〕によって取り込まれたものが正常に排出されることを妨げている。そのため、喰らったものは長門の内側へ蓄積し続ける一方で、〔暴食〕が満たされることはない。

この性質は長門自身の在り方とも奇妙なほど符合しており、どれほど多くを取り込み、成果を得ようとも、その心が満たされることはない。

『成れ果て』の異形

長門の身体に纏わりつく異形の正体は、現在彼が使用している肉体の本来の持ち主・禊真の妻であるマイカ。かつて長門の実験体とされ、その影響によって長期間にわたり心身を蝕まれ、正気を失っていった。

最後には長門から実験の成果を守るためではなく、ただ一人”我が子”と認識していた息子を自らのもとから逃がし、住処に残ったところを長門に発見される。その頃には自ら死を望むほど追い詰められていたが、長門によって命を絶たれることはなく、異形の『成れ果て』へと変えられた存在。

全身が灰と紫の長い体毛に覆われ、頭部にあたる部分は殆ど裂けた口になっており、鋭く長い牙や爪は赤黒い。目は退化している。脚部の先は人の手の様になっており、長門の肩や腕を掴む。その姿は元の人である事を想像できないほど変形してしまっている。

『彼女』は現在も長門の身体に纏わりついているが、それは長門本人を慕っているためではない。彼が奪った禊真の肉体――かつて愛した夫そのものを求めているに過ぎない。